STORY

CONITURE誕生のきっかけ、これまでの歩み、
そして未来について。

平成24年のある日、会合で名刺交換をしたヒトからの唐突な依頼でした。
日本全国で杉やヒノキの取組があることは知っていましたが、北海道の中でも木工が盛んな旭川で
どうして家具メーカーではない私に頼むのか、どういう理由があるのか、疑問符だらけのスタートでした。
当時私は、もうこれ以上新しい家具をデザインする必要はないと考えていました。
名作と呼ばれるデザインのものや高級品だけでなく、安価で使いやすいものも手軽に手に入る時代。
そのくらい世の中には製品が多く出回っています。
しかし、森のこと、トドマツの現状を理解していくうちに、無駄な製品を生み出すのではなく上手に使うということであれば
挑戦してみる価値があるかもしれないと思うようになりました。
その時はオケクラフトを主導したデザイナー秋岡芳夫さんの考えを思い出したからです。
秋岡さんは、道東のまち置戸町で、建築材からも省かれる針葉樹のアテ材を用いて器を作る仕組みを町民と一緒にはじめました。
木の性質や木工の道具に詳しかった秋岡さんはその後30年も続く地域のクラフトを生み出します。
地域の材を使って地域の人が活躍できる、そしてそれが未来の健康な森につながる。
そう思い至り、トドマツのプロダクトを作ってみるという私達のプロジェクトはスタートしました。

そうして、トドマツの製品作りが始まりました。
最初の年はまず、形にしてみる事から始めます。
建具屋さんや家具屋さんに無理を言って店舗什器を作りました。針葉樹家具特有の重厚な作りをさけて軽快に
異素材の組合せたりして検証していきます。
その後、店舗や駅、空港、家庭用などの試験導入を繰り返し、トドマツの活かし方を検証していきました。
従来の家具市場だけにしばられず、商用やイベント用など様々な可能性を出来るだけ試しました。
この作業を続ける中で、最初は2~3人で始めたこの事業も、コンセプトに賛同してくれるメンバーが増えていきます。
製品を作るデザイナーと職人だけでなく、ウェブデザイナーや製材所など少しずつ集まってくれるようになりました。

製品づくりを進める中で、木のこと森のことをもっと知りたいと思うようになりました。
相談をした農学関係の方に「どろ亀さんの本を読んでみなさい」とすすめられます。
どろ亀さんとは富良野にある東大演習林で40年もの間林長を務めた故高橋是清先生のことです。
札幌の古書店で求めた先生の本の表紙の裏には、ボールペンの手描きの文字でサインがありました。
そこにはさらに”森の保全のためにこの本の収益をあてたいのでこの本を皆さんに紹介してください”とありました。
どろ亀さんからの宇宙からのメッセージでした。そのようなご縁から、
どろ亀さんが立ち上げ現在はそのお弟子さん達が運営する「NPO法人新山川草木を育てる集い」の活動に参加し、
森のことを学ぶことになりました。そしてまだまだではありますが、
コニチャーの収益の一部をNPOの活動資金にあてて頂くお約束をしています。
H26年は、東大演習林周辺での森のレッスン、道北中川町でのトドマツの間伐現場、林道づくりの見学、
また実際に旭川近郊でトドマツの間伐体験をし、
机上だけではなく身体ごと森を知る、感じることが大切だと考えています。

コニチャーで提案する製品は、出来るだけ製品加工地の近くで伐られ製材されたトドマツ材を使います。
また材の加工は出来るだけ省き、塗装や研磨も最低限にしています。
それは余計なコストをかけずに木材をそのまま使いたいからです。
もちろん、天然の木なので割れたり反ったりすることもありますが、そうなっても良い、おおらかなデザインを心がけています。
また、長年使ってもくるいのないような家具は他にありますので、出来るだけ自然のままの特徴を受け入れて使います。
そのことで、トドマツ材の白くあたたかい木肌をじかに触る贅沢を味わえますし、
接着剤や塗料などが苦手な方でも安心して使っていただけます。
メンテナンスをすれば木の香りを幾度となく感じることもできます。
高級でも流行りものでも、はたまた安いものでもありませんが、その材料の内容や作られ方が見えていて、
地域の自然に負担をかけないのなら、くらしの道具として自信を持っておすすめできます。
コニチャーの商品は身近で大切なヒトとのくらしに安心感や楽しい笑顔がもたらされるように願い、誠実に作っています。
トドマツを通じて優しさを渡して、未来に向けて豊かな山が残せるのだから、私達はトドマツで製品を作るのです。